さい帯血保管専用施設の建設
さい帯血を保管するための施設を設計する際、主に、耐震性、安全性、クリーン度の確保、液体窒素の取り扱い上の注意点などについて考慮しました。
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▲保管施設外観 |
さい帯血保管施設を建設した茨城県つくば市桜地区は、つくばブレーンズ稲敷台地の上にあり、この大地の下は花崗岩(かこうがん)の硬い岩盤であるため地震に強い。
また、つくばには活断層がないことから、震源の浅い直下型地震が起こる確率は低く、たとえマグニチュード7前後の地震が発生したとしても、震源が深いために阪神・淡路大震災のような壊滅的な被害にならないと考えられています。つまり、さい帯血保管施設を建設するのに、つくばは首都圏では最も適した場所であると判断しました。建物は2階建ての低層設計とし、さい帯血を分離・保管する部屋については平屋建てとしました。
さらに、建物構造計算を行ったうえで1ランク上の部材を選定することにより、地震による建物の倒壊が起こらず、さい帯血を安全に保管できるよう最大限配慮しました。
施設において、さい帯血を保管するまでの工程は、さい帯血の搬入、細胞の分離・調製、調製した細胞の凍結、そして液体窒素中での保存、に大きくわけられる。これらの作業の詳細についてはあとで述べますが、建物は一連の作業動線を考え、さい帯血を保存するための専用の施設として設計しました。
施設の各出入口、および保管室出入口には指紋による認証システムを設置し、主要な通路には監視カメラを8台設置して厳重に安全対策を行いました。停電対策として、自家発電機および無停電電源装置を設置しました。すでに保管した細胞に停電の影響があるわけではありませんが、さい帯血を保存するまでの操作では、多くの機器を取り扱わなければならない。そこで、これらの停電対策を施すことにより、細胞の調製作業の途中で停電が起こった場合にも、機器が停止することなく一連の操作を行えるようにしました。

建物を設計する上で、重視した要因のひとつがクリーンルームの清浄度です。細胞の分離・調製を行うクリーンルームはクラス1000(1立方メートルあたり1,000個の粒子があるレベル、実測は650)とし、その中にクリーンベンチ(クラス100)を設置しました。これらの設備により、無菌環境での分離・調製が可能になったとともに、複数の無菌対策を組み合わせたことで無菌操作の安全性を高めました。細胞を凍結保存するための部屋はクラス10000のレベルであるが、清浄度のほかに液体窒素対策という重要な要素を組み入れる必要がありました。
さい帯血は、−196℃の液体窒素中で保管されます。この液体窒素を取り扱ううえでの危険性としては、液体窒素が体に触れることによる凍傷、液体窒素の急激な気化による爆発、そして最も注意が必要な窒息があげられます。
窒息は、液体窒素が気化して約700倍の体積になることから空気中の酸素濃度が低下することにより引き起こされる。酸素濃度は18%が安全の下限界であり、14%以下になると全身脱力、気温上昇、意識が朦朧となり危険な状態になります。そして、6%以下では失神、痙攣や心臓停止を起こし死亡します。このため、液体窒素を取り扱う場合には換気を十分に行わなければなりません。液体窒素は気化した直後は空気より重いことから、建物の柱自体をダクト化し、柱下部より廃棄を行う構造としました。

部屋の上部から給気して空気の流れを起こし、窒素溜まりが起こらないように常時換気することで、酸素濃度は21%に保たれます。さらに、非常用として、酸素濃度が18%になったときには強制的に給気と排気を行うことで安全を確保できるシステムも併用しました。
部屋に空気の流れを起こすことは、清浄度を保つことにも活かされている。空気の流れによって部屋の空気が均一となり、局所汚染がなくなります。その結果、常に均一な清浄度が確保できることになるのです。
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